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ぬるま湯雑記帳

岡田英次編・参

参まできたか~。

【岡田英次編】其ノ参

『狂った果実』  1981年  監督:根岸吉太郎 
 決して『のれんの向こう側』に潜入したわけではありません(力説)。でも見ましたよイヒヒヒヒ。括りは「にっかつロマンポルノ」なんですが、そうかあポルノかあ?Vシネの方がよっぽどよっぽどだし、実相寺作品どころかへたすりゃ『エマニエルの美女』にも負けるぞお?暴力シーンに問題あったのか…Vシネもバイオレンス山盛りだしなあ。「のれんのこっち側」に引越しを切に願う作品です。見終わった後の後味はよろしくなく、泥を飲んだような気持ちになりましたが、ワタシ嫌いじゃありません。当時の…ってさすがに当時をつぶさに知ってるわけではありませんが、なんとなくその時代のもやもや感や鬱屈感が出ているように思ったのであります。根拠を言えって言われたら困るなあ、雰囲気雰囲気。
 昼間はGS、夜は暴力バーで働く主人公。ひょっとしたことから女子大生を押し倒して未遂に終わったが、その後からかい半分で主人公につきまとう彼女に振り回され、トラブルに巻き込まれてゆく。
 女子大生は悪女と不良と、今でいうところのフシギちゃんを足したような感じだな。普通強姦されかかった男にはつきまとわないぞ。もとからカタギの世界にいたわけじゃないんだけど、主人公が自分の意思とは関係のない部分でもっと不条理な方向へ進んでゆく。「狂っている」のは日常なのか彼なのか…。
 さてエイジの役どころは、この女子大生の義父にして「愛人」。彼女の歪んだ性格形成に大きく関与した人物といえましょう。建築家のインテリ君で、立原道造の詩を口ずさんだり、エプロンして♪パエリアを作ったりしますが、ヒトコトで言ってしまえば変態おやぢ。登場最後には主人公に見事殴り倒されます。主人公、やさぐれてるけどお母さん想いで根は真面目なんだよー。一応娘VS義父のムニャムニャシーンはあるのだが、エイジは上しか脱がないし、娘もタオルぐるぐる巻で重装備だし、演技してるし(そりゃそうなんだけどさ)、あっという間に場面変わっちゃうし、まことに「なんちゃって」で、そちらの方を期待してると肩透かしです。当時のポルノは、それともこの監督さんだったからなのか、ストーリー性重視なんだなあ。

 話はそれまして、山国にはかつてにっかつの映画館があって、小学生お剛の行動範囲ににっかつポスターが貼ってあるところがありました。2本立てか3本立て。字だけなんだけど、どうにも字体からしてあやしく、内容はよく分からないまでも(分かってたら困る)普通とは違う映画をやってるんだなー、ということはうっすらと。で、ワタシ『狂った果実』の「字だけポスター」見てるんですよね。覚えてる。この頃ポスターや張り紙読むために立ち止まることが多く(今もだ)、「クダモノが狂ってるってどういうことだ?」と思いながら立ち尽くしていた記憶があります。その映画をこうして20数年後に見る日がこようとは…エイジ出てたんだなあ。感無量です。

『五瓣の椿』  1964年  監督:野村芳太郎 
 映画は2部構成。簡単にいえば、孝行娘の復讐劇。とある薬種問屋。実の娘でないと知りながら自分を可愛がり、入り婿の立場で働きづめで病に斃れた最愛の父親。そんな父の最期にすら男と遊んでいた母と、母を自堕落の道を歩ませていった男達へその美貌で近寄り、復讐を次々と遂げてゆく…といったところでしょうか。いろいろ端折ってます。
 孝行娘のおしのに岩下志麻姐さん。志麻姐さんは男を殺したあと、必ず父の好きだった椿の花と、凶器のかんざしを残してゆく律義者(?)。そんな志麻姐さんの犠牲になったのが、常磐津師匠の田村高廣、町医者の伊藤雄之助、札差の道楽息子小沢昭一、母親・左幸子に男を紹介し続けた仲介屋の西村晃。そして、この世で苦しませるため殺さなかったのが、実の父親だった大店の主人エイジ。いやー錚々たるうさんくさい面々。そうそう(シャレじゃないよ)母親とその愛人を焼き殺したのが発端となるのですが、その愛人役はどなただったか…。
 どいつもこいつも男の勝手ばっかりぬかしやがって、腹立たしいこと限りなしなのですが、皆さん「イヤなヤツさせたら日本一」てな芸達者ぶりでしたから、どれも見事役にハマった台詞でして、逆にホレボレしましたよ。
へなちょこヒョロヒョロ役の高廣さん、めめしい優男ぶりがピッタリでした。変態強欲オヤジの伊藤さん、彼の「舌の演技」は非常に気持ち悪くていいですね(どっちだよ)。ボンクラ畜生のショウちゃん、こりゃあトコトン憎ませてくれる役でした。したたかでこすっからい西村さん、この方は悪役がいいですねえ。実の娘にセマってたエイジ、知らぬこととはいえ思えば気持ちわる~。でもなかなかのセマりかたでしたよ♪ちなみにエイジの妾役は市原悦子でした。つい魔が差して奉公人に手をつけたらしいのですが、シュミが一貫しない男よのー。
 左幸子の鉄漿怪演も流石でしたし、相次ぐ殺人の謎を解きつつ、志麻姐さんに同情をよせてゆく加藤剛さんの正義感あふれる与力もなかなか。しゃべりすぎだけど志麻姐さんの熱演もよかった。最後はじーんときたなあ。
物語の性格上やたら説明が多かったのと、場面転換がちょっと…でしたが、あ、肝心なことを、姐さんの最愛のおとっつぁんは千代吉(加藤嘉)でした。病人させたら日本一!…えー、思ってた以上に見所も多くて良い作品でした。

 最後にヒトコト、お女郎さん集結場面があって、お一人小梅太夫(←知ってます?)も真っ青のものすごい白粉+頬紅さんがいて、結構悲しい場面だったのに彼女に釘づけだった自分がイヤ。チクショー!!

『少年探偵団 第一部妖怪博士・第二部二十面相の悪魔』  1956年  監督:小林恒夫 
 「ぼっ・ぼっ・ぼっくらはしょーねんたんてーだん♪」です。これ、おこちゃま向けの映画とはいえ、この作品と後述の少年探偵団のシリーズ、エイジファンは観ておきたい作品です。ネクタイにスーツ、ソフト帽にコート、落ち着いた上品な口調と言葉遣い。まことに働きの悪い小五郎ですが、正統派のエイジ小五郎が楽しめます。同じ明智シリーズでも土ワイの大人バージョンとおこちゃまバージョンではえらく違うのだなあ。同じじゃ困るけど。
 極秘の原子炉設計図を奪おうとする二十面相と、明智君と少年探偵団の攻防戦(←手抜きのあらすじ)。…まあねえ、こちらは二十面相役のバンバンをよく存じ上げてるからすぐ分かっちゃうけど、結構頑張って変装したと思うんですよ。乞食・博士・老婆・ヘンな外人・探偵(これは違うヒトがやってたな)・包帯ぐるぐる巻の明智君・東北弁の運転手・マタギ(…かな?)。ワタシの一押しはヘンな外人。ダウンタウンの松っちゃんがコントでやってたような口調で、非常にカンに障る声で笑うんですわ。二十面相って正体明かしたんなら普通にしゃべればいいのに、その後もなんちゃって日本語で押し通しており、爆笑でした。そういや東北弁君も押し通してたなー。
 エイジは子どもに働かせて、自分は決め台詞づきのおいしいとこどりです。それでも石膏攻めにあったり、怪我して中原ひとみに頭に包帯巻いてもらったり、バンバン二十面相とグダグダと殴り合ったりなど、エイジファンを喜ばせる見せ場はなかなか♪
 ああもう、つっこみたい場面はいろいろあるんですよ、エイジはからくり屋敷の床がばかっと開いたら静かに落ちてくし、部屋はごろごろ回転するし、屋敷はすごい勢いで爆発してるけど誰も死なないし、ラストの鍾乳洞では子どもがUFOキャッチャーのぬいぐるみ状態でどんどんさらわれてゆくし、そのときは蝙蝠みたいなカッコしてた二十面相一味は、逃亡の際にはスーツに着替えてるし…でもそれなりの臨場感。思いのほかワクワクしながら見ましたよ。
 バンバン二十面相、最後は「今回の計画は失敗に終わったが、君との勝負はこれからだよ明智君、うはははは」とかなんとか言ってさっと姿を消すのかと思いきや、崖から落ちて大怪我で、警察のヒトに担架で運ばれて行っちゃった。合掌。

『少年探偵団 かぶと虫の妖奇・鉄塔の怪人』  1957年  監督:関川秀夫 
 …雰囲気から察するに、前作ラストで崖から落ちて担架で運ばれていったバンバン二十面相が、その後刑務所に入れられてるうちに千代吉二十面相に変貌を遂げちゃったみたい。バンバンのスケジュールの都合がつかなかったのか、そうだとしてもなぜよりによって千代吉に白羽の矢が立ったのか、変更するにしてももうちょいバンバン路線の方でもよかったのでは、と思っちゃいましたが、こんなに動きのある千代吉を観られた幸福には感謝せねばなりません。よく頑張ってたなあ、コスプレさせられた挙句にヨロヨロだけど。
 服役中の二十面相は、明智小五郎と少年探偵団、自分を牢にぶち込んだ人々に復讐するべく脱獄、性懲りも無く再度原子炉の秘密設計図を盗み出して某国に売り込もうと画策する。それを阻止しようとする明智君と少年探偵団を二十面相の魔の手が伸びる。
 うーん二十面相対決、千代吉とバンバンどっちが変装の名人か…。怪しい外人や老婆に化けたバンバンの勝ちでしょうかねえ。東北弁も頑張ってたし。じいさま役に関してのみ圧倒的な強さを持って千代吉の勝利。まあねえ、千代吉はなにに変装しても千代吉。ただ二十面相の「ヘンさ加減」は千代吉に軍配。反対意見承知のうえでおそるおそる言ってみますが、マントに蝶ネクタイの正装時、微量の宝塚男役と佐田啓二(佐田啓二ファンの方すみません)が含まれていましたよ。千代吉にしてはがんばった男前路線でしたがちょっと古め、明治時代のモボの雰囲気か、眉剃ってるし描いてるし。テレビに出たがりで妙にエンターティナー気取りでした。千代吉の二十面相は、プライベートでは劇場に足しげく通ったクチでありましょう。子どもに容赦しない大人気ない点では、どちらもどっこいどっこいでした。
 『かぶと虫の妖奇』と題にあるように、かぶと虫ロボットが家や原子力施設を襲います。10台もあるんですよ。すげえ。でも1つ疑問、まだかぶと虫ロボットと判明する前に専門家が襲撃跡を見て「これは8本足のなにかだ」っていうんですけど、で、ロボットはたしかに8本足だったんですけど、かぶと虫ってホントは足6本っすよね…どうしたことでしょう。またこのかぶと虫、威力はまあまあだけど、実物同様ものすごくトロい。そして飛ばない。なんでかぶと虫仕様にしたのか、千代吉に聞いてみたいです。角はドリルになる優れものでした。
 今回も引き続きエイジ小五郎はカッコいいけど、前作以上に働きません。少年探偵団がめちゃめちゃ働きます。危ないことは引き受けてくれます。命の危機にもさらされます。ぎりぎりまで助けにこないエイジ小五郎、それでも忠誠を誓う彼らは健気で不憫です。もうそんなに頑張らなくても…少年探偵団に我が子を入団させてる親御さん、もっと心配してあげてください。子どもたちが大変です。鉄塔王国で千代吉たちに強制労働させられてたんですよー。ラストのメタメタ銃撃戦で、怪我しなかったのは奇跡なんですからねっ。

 今度こそ二十面相は死んでしまったようです。合掌。

『日本大侠客』  1966年  監督:マキノ雅弘
 今回は突撃浅草名画座企画。あらすじはざざっと、興味のある方はgooとかで調べていただくとして(ひでえ~)エイジの活躍?について多く触れることにいたしましょう。
 九州小倉だったかな、実在の人物吉田磯吉を脚色豊かに描いた作品。あの手この手で己の利潤のみを求め、労働者をいいように使おうとするヤクザたちに人情派磯吉がたちむかってゆく、ってところでしょうか(いい加減)。
 磯吉役が鶴田浩二。敵役の親玉が近衛十四郎、磯吉を想いつづける芸者お竜に藤純子。あー、ワタシがオトコだったら、やっぱりお竜さんに惚れると思う。オンナからみても「いい女」でした。今回はエイジに重きを置いて見ちゃったんだけど、もし今後みることがあったらお竜さん中心に見ると思う。そして泣くなあ。

 エイジの役どころは「結核もちの病弱刺客」。当初は金欲しさに雇われて、磯吉のタマをトるべく東京からやってきました。だから、周囲が九州弁のなかエイジは標準語、さらに袴姿で登場です。どうやら以前は剣の道で食ってたって設定ですね。エイジの袴姿、貴重かも♪
 でもって何食わぬ顔で磯吉のお宅訪問、磯吉を斬ろうとチャンスを狙うが、酒を酌み交わした時点ですでに咳をし始め…普通あれだ、このテのパターンではある程度チャンチャンバラバラして、主人公が倒れ、ここでトドメだってときに刺客が咳き込み喀血、主人公難を逃れる、って感じでしょう。エイジ斬りかかってすぐ大喀血。早っ、そして血吐きすぎ。手元が狂ってうっかり鴨居を斬っちゃったりして、まともな働きが出来ず磯吉に大変心配される。で、その場から逃げてゆくんだけど、結局磯吉に療養所で面倒みてもらうんだよ(涙)。思えばかなり屈辱的。
 
 療養所シーンでは、顔色悪くして無精ひげを生やすも、顔のでかさも手伝ってか(失礼)、それほど病人には見えませんでした。水入れすぎのぱんぱん氷嚢を額にのせ、うつろな表情で寝込んでるシーンには爆笑。あれは笑っていいところだと思います。そんなエイジを見舞っては励ます磯吉。二人の間に友情が芽生え、見せ場の「磯吉いよいよ殴りこみ」には病をおしてエイジもかけつける。先の磯吉襲撃の時よりは働いたけど、ピストルでばんばん撃たれて、殴りこみをかけたメンバー中一人だけ死亡。死体となって二人がかりで運ばれて終了。エイジが参加しなくてもこの殴り込み、たぶん成功したと思うわ…。

 出来事だけ書き連ねれば若干おまぬけだけど、あのねえ、カッコよかったです。真面目で物静かなインテリ風病弱ヒットマン(←どんなだよ)を見事に体現、翳のある表情がまことによろしかったです。屈託系のエイジの得意分野かな。髪は短め。袴は最初だけだったと思う、あとは着流し、そして療養所の浴衣(笑)。それも珍しいよね。

 脇役も充実していて大変よろしく、特にしびれたのが磯吉ンとこのじーやん。子守してて赤んぼを背負ったまま、チンピラをどんどん斬って、なんてことない顔して家に戻ってきた河野秋武!今回一番男前だったのは君だあ!

 東映さん、DVD化よろしく。これは絶対するべきです。

『若き日の啄木 雲は天災である』  1954年  監督:中川信夫おにゅう
 ニッセンCさん、どもありがと。巡り巡ってワタシも見ることができました。ポスターをネット上で発見し、それが今のワタシに出来る精一杯だと思っていたら、こんなチャンスがー(むせび泣き)。嬉しいです。
 
 内容はというと、あー、正義感がヘンに強く、わがまま能天気インテリ屈折屈託潔癖の啄木がいろいろもめて、ド貧乏な家族や妻子をさんざん犠牲にして青森から北海道に渡り、新聞記者としてやっとめどが立ったところでまたもめて、単独東京を目指すという話。以上。
 
 これは、女の敵という以前に人類の敵では…?ああめんどくせえなあ、ドリーマーはよー。妻子にメシ食わせてから寝言を言えってんだ(注:この文を書いている2007年8月29日、お剛はブラックが大変活性化しており、多いに毒気を含んでおります。ご了承ください)。顔がエイジでこの性格のヤローが、今、ワタシの前に現れたらどうしようかという妄想に真剣に悩んだ結果…ムリ。いくらなんでもこんなのはイヤだわー(苦笑)。勤務先(小学校)の子どもには慕われてたけど、ねぇ。生活って、違うじゃない?←考えがおばちゃん化してます?
 あと許せなかったのが、啄木エイジが、彼に想いをよせる芸者に向かって「キミは僕の妹(のつもりだ)宣言」をしやがったこと。なんたるぼーくねーんじーん!!!!!アンタねえ、どんなつもりで小奴が…もうっ(怒)。「妻子がいるから日陰の身になってくれ」より残酷じゃー。
 
 …しかしエイジはこの役にぴったりだったなあ。ナイス人選!こういう役は品と、ちょっとのイヤミな雰囲気がないと出来ません。いつもの「さらさら髪」素敵です。『ここに泉あり』の役と少し重なるところがありますね。ぬるま湯上で話題になった「豆を食うエイジ」の可愛さにいたっては、まことにもって言うことございません。結構なものを見させていただきました。すねるとバイオリン弾くしねえ…それもポイントが高かったです。
 
 顔の大きな山形勲の芸達者万年よっぱらいぶりや、可愛らしい左幸子、綺麗だった角梨枝子などもステキでした。ただ、ステキなエイジと啄木のあほちゃびんさに心を奪われて、霊界丹波さんと明智君天知さんを確認出来ませんでしたので、これは早急に復習したいと思います。
 最近、映像の巻の文章が冗長すぎる点を反省し、これにて終了♪



 
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